自分に向いている仕事を考えるとき、これまでの経験や興味を整理したり、求人や職業情報を調べたりすることは大切です。
ただ、調べれば調べるほど候補は増えても、「実際に自分がその仕事をできるのか」「無理なく続けられるのか」までは分からないことがあります。
私が行っているメンター活動でも、複数の仕事の可能性を整理したあと、次に何を確かめるべきかを考える機会がありました。
そこで選んだのは、すぐに「この仕事が向いている」と結論を出すことではなく、候補の一つを小さな実務で確かめてみることでした。
今回は、その支援から考えた「仕事を調べる段階」と「実際に試す段階」の違いについて整理します。
仕事を知ることと、実際にできることは別
仕事を考えるときには、自分の経験や関心、働き方の条件を整理することと、世の中にどのような仕事があるのかを知ることの両方が必要です。
厚生労働省は、キャリアコンサルティングを通じて、自分の適性・能力・関心などへの気づきから自己理解を深めるとともに、社会や企業にある仕事を理解し、その中から自身に合った仕事を主体的に選択できるようになることが期待されると説明しています。
また、厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、職業の内容、就労する方法、求められる知識やスキルなどを調べることができます。こうした情報は、仕事の候補を知るために役立ちます。
一方で、仕事の内容や必要なスキルが分かっても、自分が実際にその作業をどの程度できるか、どのくらい負担を感じるか、続けられそうかまでは情報だけでは確認できません。
| 確認する段階 | 主に分かること | まだ分からないこと |
|---|---|---|
| 仕事を調べる | 仕事内容、求められる知識・スキル、働き方など | 自分が実際にできるか、負担なく続けられるか |
| 小さく実務を試す | 正確性、理解、確認方法、負担、継続しやすさなど | 実際の市場で選ばれるか、対価を得られるか |
| 実市場につなぐ | 顧客・採用側の評価、条件、対価との接続 | 長期的な継続性や将来の変化 |
「その仕事が存在すること」と「自分がその仕事を実際に行えること」は、別の判断材料として考える必要があります。
候補を広く探すか、一つを深く試すか
今回の支援では、これまでの経験や働き方の条件を整理しながら、EC、QA・テスト、業務支援など、いくつかの仕事の可能性を比較してきました。
そのうえで次の段階では、ECを一つの検証領域として、小さな実務を試してみる方向へ進むことになりました。
ここで重要なのは、ECが向いていると判明したから選んだわけではないということです。
複数の候補を調べた結果、次に分からないことが「実際にやってみたときにどうなるか」へ変わってきたため、一つを深く確かめる段階へ進んだということです。
- まだ仕事の選択肢そのものが分からないなら、候補を広く調べる。
- 候補が見えてきても判断材料が足りないなら、必要な情報を追加で調べる。
- 調べても「自分が実際にどうなるか」が残るなら、小さく試す。
つまり、重要なのは「たくさん調べるか、一つに絞るか」ではなく、今、何が分からないのかです。
小さな実務検証で何を見るか
今回の次のフェーズでは、仮のEC環境で、実際の業務を参考にした小さな課題に取り組んでもらう予定です。ただし、これはこれから行う検証計画です。すでに実施して成果が出たという話ではありません。
試す作業の例
- 商品名、価格、カテゴリー、画像、在庫などの登録・確認
- 元の情報と登録内容に違いがないかの確認
- Web上の表示や内容、リンクのチェック
「できた・できない」以外も記録する
見るべきものは「作業ができたか」だけではないと考えています。
- 正確性
- 手順の理解
- 確認方法
- 作業中の負担
- 集中の続き方
- 同じ作業を繰り返せそうか
- どの程度の学習が必要か
一度できたから「向いている」、一度難しかったから「向いていない」と決めるのではなく、実際の結果を次の判断材料にします。
実務ができることと、収入につながることも別
もう一つ分けて考えたいのが、作業ができることと、仕事として成立することは同じではないという点です。
仮の環境で作業できたとしても、それだけで実際の顧客から選ばれることや、対価を得られることまで確認できたわけではありません。
今回の支援でも、現時点では、実務上の適性、実務能力、市場からの評価、対価の獲得をそれぞれ未検証のものとして分けています。
小さな実務検証で確かめられることと、実際の市場に接続しなければ分からないことを混ぜないことが重要です。
支援する側の得意分野を、相手の答えにしない
私はWeb・ECを専門領域としているため、ECであれば実務を参考にした検証環境を用意しやすく、実際の仕事で求められる基準との比較もしやすい立場にあります。
しかし、私がECを扱えるからといって、相手にとってECが正解になるわけではありません。
今回ECを選んだのも、「私が得意だから」ではなく、これまで整理してきた候補と本人の意向を踏まえ、次に必要な検証を実際に行える領域だったからです。
試した結果、合わないと分かる可能性もあります。それでも、その結果は次の候補を考えるための新しい情報になります。
次に減らしたい不確実性を決める
仕事の可能性を考えるとき、最初から一つの正解を決める必要はありません。
- 経験や条件を整理する。
- 仕事について調べる。
- 候補を比較する。
- 調べるだけでは分からないことが残ったら、可能な範囲で小さく試す。
- 結果を見て、続けるのか、学ぶのか、別の方向へ進むのかを考える。
今回の支援は、まさにこれから実務を試す段階です。まだ適性や成果についての答えは出ていません。
だからこそ、現時点で分かったことと、まだ分からないことを分けたまま進めています。
自分に向いている仕事を探しているときも、「答えは何か」だけを考えるのではなく、今の自分は、次に何を確かめれば前へ進めるのかと考えてみると、次の一歩が具体的になるかもしれません。
参考情報
※この記事は実際のメンター活動から得た知見を一般化して整理したものです。個人を特定できる情報や非公開の相談内容は掲載していません。また、本文で扱う実務検証は記事作成時点ではこれから行う段階であり、特定の仕事への適性や成果を示すものではありません。
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